【具体的に解説!】木の温もりの「温もり」ってなに?

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こんにちは!代表の田中です。

皆さん、これまでに「木には温かみがある」とか、「木の温もりが好き」とか、こういった表現を見聞きしたことはありませんか?僕は今の仕事柄、このフレーズを目にすることが多いのですが、実はいつも思っていました。

木の『温もり』って、一体なんなんだろう?と。

なんとなくこんな意味合いで使っているんだろう、というのはあるのですが、ちょっと感覚的なんですよね。そこで、今回はしっかりと木の『温もり』の正体を、科学的根拠や研究結果に基づいて認識しておきたいと思います!

木の温もりって一体なに?と思われている方は、ぜひお読みいただければと思います。

木の「温もり」とは?4つの視点から考えてみる

いろいろな研究結果を参考にして、今回は「温もり」の正体を以下の4つの点から導き出したいと思います。

  1. たくさんの空洞がある「多孔質」だから温かい
  2. 見ただけでも癒される「木目
  3. 手で触っただけでも癒される「手触り
  4. 足で触れても癒される「足触り

面白い様々な研究がすでに行われていましたので、それらの結果を元に、一つひとつ確認していきましょう!

① たくさんの空洞がある「多孔質」だから温かい

木を顕微鏡を使って見てみると、小さな無数の空洞を持つことが分かります(この性質を「多孔質」と言います)。

よく見かけるスギは、こんなにも小さい穴の集合体なんですね。この小さな穴には空気が入っていますが、実はこの空気が断熱材の役割を果たしています

「温かさ」の根元である「熱」の伝わりやすさは、物質によって異なり、熱伝導率という数値によって区別されます。

熱伝導率の数値が大きいほど熱は伝わりやすくなります。金属はその代表例です。たとえば調理用の鍋を想像してみてください。火にかけた鍋は高温になり、とても素手では触れませんよね。

反対に、熱伝導率の数値が低い代表例が空気です。空気は熱が伝わりにくいですが、この空気をたくさん含んだ木が調理用鍋の取手部分に使われています。鍋が高温になったとしても持ち手が木なら熱くないという原理です。

「空気は熱を伝えにくい」という性質を活かした商品は多いかもしれません。身近なものには、セーターやダウンジャケット。これらは空気を上手く着るための服ですね。また、畳は冬でも温かいですが、これも畳が空気をたくさん含んでいるからです。

結論、木にもたくさんの空気が含まれていますが、これが理由となり、木は暖かく感じるのですね。

② 見ただけでも癒される「木目」

「温かい」「温かみがある」というのは、目で見たときにも感じるようです。試しに、以下の画像を見比べてみてください。どちらの画像で温かみを感じましたか?

おそらく、木材が使われている建物の方がより温かみを感じられたのではないでしょうか。

ここで気になるのが、視覚的に感じるこの温かみとは一体何か?ということです。この疑問の答えになりそうな実験結果がいくつか出ていました。(*ここから幾つか記述している参考文献を元にした説明は、適宜、簡易的な表現に改めています)。

京都大学及び京都女子大学の学生46名(男女それぞれ23名)に対して、様々な室内空間の写真48枚を見せた。それぞれの写真のイメージを「あたたかな」「重厚な」「感じのよい」など10の指標で点数化してもらった結果、室内空間に木材があると「和んだ」「あたたかい」「重厚な」「感じのよい」イメージに影響を与えることがわかった。

参考:「室内空間における木材率とイメージ」、著者 増田, 稔; 山本, 尚美、1988年12月

被験者14名に、木材が全く使われていない部屋から、木材使用率が68.0%である異なる4部屋に座ってもらった。その結果、木材が全く使われていない部屋では収縮期血圧(=上の血圧)に目立った変化はなかったが、それ以外のヒバ材を使用した3部屋においては収縮期血圧に有意な低下が見られた。
木材にはリラックス効果があるようだ

参考:「木の良さデータ整理検討報告書」、一般社団法人木を活かす建築推進協議会、2016年3月

「なぜ木をみると『温かい』と感じるのか?」は、やはり研究者にとっても疑問であったようです。この疑問に対する答えを見つけるためにアンケート形式で調査し、上述したような結論を出されています。

木を見ると温かいと感じることは分かってきましたが、このような面白い研究結果も出ています。「木であればどんなものでもリラックス出来るのか?」というと、必ずしもそういう訳ではなく、よく目にする自然な色味のある木目が最もリラックス出来るようです

色の違う木目模様のシートを貼った「ブース」を5種類用意し、女性被験者20名に中に入って壁面を眺めてもらいました。その結果、「ミディアム」の木目を見たときに最も副交感神経活動が活発(=リラックスしている)と言うことがわかりました

参考:「木材の見た目やにおいが与える影響」、森林総合研究所、2014年版研究成果選集
色の異なる木目模様のシートを貼ったブース。「ミディアム」が最も副交感神経活動が活発になった。

上の5種類の木目を見て、どの柄に温かみを感じるでしょうか?私もやはり「ミディアム」が一番落ち着く色味であるなと思いました。

③ 手で触っただけでも癒される「手触り」

視覚的に木には温もりがあることがわかりました。では次に、実際に触ったときにはどんな反応があるのでしょうか?

こちらも研究によって、木材の手触りが金属やプラスチックなどの他材料に比較して体に「やさしい」ということが証明されています

様々な材料で作った手すりを被験者に触ってもらい、 その間の生理的な反応を測定しました。その結果、金属(アルミニウム)、プラスチック(ポリエチレン) の手すりに触ったときには収縮期血圧(=上の血圧)が上昇しましたが、木材の場合は、針葉樹でも広葉樹でも、また塗装があってもなくても、変化が認められませんでした。 木材への接触は、金属やプラスチックより体に負担をかけない可能性があると考えられます

参考:「木材の香りや手触りの良さを科学的に解明する」、森林総合研究所第3期中期計画成果集
左:接触実験の様子、右:手すりへの接触による収縮期血圧の変化

また、こんな面白い実験もありました。木材、紙、プラスチック、塗料、ガラス、陶磁器、金属など、素材の異なる18種類の材質に、中指と薬指の2本(指紋側)を軽く接して滑らせた場合に人がどのように感じるかというものです。

この実験の結果、木材が最も摩擦が少なく、滑りやすいということがわかりました。「木を触るとさらさらする、すべすべする」というのは、木の特徴でもあり、触っていて気持ちが良いという感情になりやすいのです。
(参考:「木材および他材料の表面の感触と皮膚の模型によるすべり摩擦係数との関係」、林試研報

④ 足で触れても癒される「足触り」

手の次は足に与える効果も見てみましょう。

森林総合研究所は、「木材に足で触ると脳も体もリラックスする」というタイトルで次の研究発表をしています。

成人女子大学生19名にヒノキ材へ90秒間、足裏接触してもらい、その時の脳活動と自律神経活動を計測しました。
その結果、ヒノキ材への足裏接触は、左右脳前頭前野の血流量を低下させるとともに、副交感神経の活動を高め、交感神経の活動を抑制させることが示されました。つまり、ヒノキ材への足裏接触によって、脳も体もリラックスすることが明らかになりました。

参考:「木材に足で触ると脳も体もリラックスする」、森林総合研究所
図:ヒノキと大理石に足裏接触した場合のストレス度合いの違い。ヒノキの方が圧倒的にストレスが少ない。

手で触っても気持ちの良い木材は、足で触っても同じように気持ち良いのですね。フローリングの上を裸足で歩くと気持ちが良い理由は、ここから来ているのかもしれません。

まとめ

いろいろな側面から木を捉えてみましたが、「素材自体が温かい」「視覚的に温かさを感じる」「手や足で触ってみるとリラックス出来る」といった特徴があり、総論として木は「温かい」と感じると言えそうです

色々と文献を読んでみましたが、木の温もりについては「これからも継続的な調査が必要である」と結んでいる研究者は多くいました。今後、どのような調査研究がなされるのか、楽しみです。

合わせて読みたい

参考文献

「木材の見た目やにおいが与える影響」、森林総合研究所平成26年版研究成果選集
「木の良さデータ整理検討報告書」、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会
「木ってどうなっているの?」、森林総合研究所
「木材の香りや手触りの良さを科学的に解明する」、森林総合研究所第3期中期計画成果集
「木材および他材料の表面の感触と皮膚の模型によるすべり摩擦係数との関係」、林試研報
「木材に足で触ると脳も体もリラックスする」森林総合研究所