<鳥大生ゲーム開発記録 最終回> 2020年2月 大学にて最終発表会が行われました

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2019年度の1年間をかけて鳥取大学の先生と学生、イッポラボがコラボレーションをして進めてきたゲーム開発の取り組み。この度、2020年2月をもって前後期の授業が全て終わり、最後の授業となった2/1(土)には学生による成果発表会が開かれました。
果たして学生たちがどのような形で活動を終わらせるのかとても関心がありましたが、結果として3つのゲーム開発にたどり着いたようです。成果発表会のプレゼンデータと原稿を学生からいただきましたのでこちらでもご紹介いたします。


私たちは「ゲーム教材の開発と実践」というテーマでボードゲームに着目し,約1年間の活動に取り組みました。ゲームを「教材」として教育に導入することに一体どのような意味 があるのか。私たちはオリジナルゲームを制作するとともに様々な施設を訪れ研究を進めてきました。しかし私たちはそもそもボードゲームにほとんどなじみがありませんでした。そのため,まずはボードゲームを知ることから始めたのです。

私たちは授業を通して様々なボードゲームをプレイしました。その中でゲームによってカードや積み木など色々な道具が使われていること,また心理や頭脳,ときには運さえもが勝敗を左右する重要なツールになっているということを発見しました。単純なように見えて実は入り組まれたシステムとちょうどよいバランス,ボードゲームの奥深さを私たちは体感しました。 

ボードゲームを制作したからには,当然プレイしてもらわなければなりません。私たちはイッポラボ合同会社さんと連携してゲーム開発を進めることになりました。イッポラボさんは子ども向けの玩具のデザインや販売,また工作イベントの開催などといった活動をさ れています。もし自作ゲームが認められ,イッポラボさんを通して販売することができれば …。このタイアップこそ私たちのゲーム制作の大きなモチベーションとなりました。

また銘木工房「ゆら木」さんにもお伺いしました。実はここは廃校になった小学校の図工室がそのまま工房として利用されているのです。私たちはボードゲームを根本から研究するため,ツールとしてよく使用される木に着目しました。種類や耐久性,加工についてなど様々な角度 から木について学びました。

いよいよボードゲームの制作にはいっていきます。私たちが開発するのは「教材としてのゲーム」。ボードゲームを通して何かを学習することができる,それが今回のキーポイントでした。しかし,いきなりテーマに縛られすぎるといいゲームは作れません。まずはゲームのシステムから考察を始めました。イッポラボさんで販売されている木の玩具の温もり,工房で体感した木が秘めた様々な可能性,私たちはそんなポテンシャルの高い,木を使ったボードゲームを開発することにしました。

木を利用した遊びで代表的な積み木。子供から大人まで楽しむことができるこの積み木をゲームシステムの基盤にしました。そうと決まれば さっそく作業開始です。たくさんの木を切り,繋ぎ複雑な形に仕上げ赤・黄・青・緑の4色 に塗り分けました。1番初めにできたこのゲーム,ルールは至って単純でそれぞれの色から好きな形を1つずつ選び積み上げていきます。4色積み上げることができたら,また各色から1つずつ選び積み上げていく、それを繰り返し結果的に高さを競います。

8月と1月にわらべ館をお借りして実際に子どもたちに積み木ゲームをプレイしてもらいました。チーム戦の協力型ルールでしたが,「どの積み木を選ぶか」「どこに置くか」など子どもたちがチームで協力し策略を立てている様子が多々見られました。

システムがある程度決まったら,いよいよテーマを決めます。ゲーム開発には,目的,策略性,ゲームバランスなど,求められることがたくさんあります。しかも私たちが今回制作するのは教材ゲームなので,「テーマ」もまた重要な開発条件のひとつになるのです。

そして,私たちがゲームを通して学習してほしいと選んだテーマがこちらです。

こちらの図を見たことはあるでしょうか。これは国連が 2030 年までに達成するべきとして立てた 17 個の目標「持続可能な開発目標」通称 SDGs。今地球規模で様々な解決すべき課題が存在します。 しかしこのSDGs はまだ日本での認知度は低く,ほとんどの人が関心を寄せていません。そこでゲームを通してSDGs に触れ、世界中のあらゆる問題点を知ってもらうということを目標に,テーマとして導入することにしました。自分達だけでなく,小学生から大学生まで多くの方たちにもテストプレイをしていただきました。何度も試行錯誤を繰り返し,ようやくゲームとして完成しました。 

それでは 2 人のメンバーが個人的に制作したゲームを含め,3つのオリジナルゲームを紹介させていただきます。 

それでは研究成果のまとめに入ります。先ほども述べたように様々な方たちにゲームをプレイしていただいたのですが,年齢によってゲームへの取り組み方がまったく違うということがわかりました。たとえば小学生や小学生以下のプレイヤーはテーマではなく,ゲームシステムそのものに夢中になっていました。そのため思考力や集中力,グループ戦では協同性の向上につながることも考えられます。中高生や大学生以上になるとテーマに着目しながらゲームに取り組むことができ,遊びという自然な状況の中で物事を学習するということが可能になるのではないかと考えられます。このように学年や年齢によって教材としてのゲームの役割は変わってきます。学習者の状況に応じて適切なテーマや難易度,システムのゲームを与えることが重要です。しかしそれをうまく利用することができれば教育において合理的な教材になると考えられます。

これからの教育において,教材としてのゲームに注目してみることは子どもたちの学びの可能性を高めることになるのではないでしょう。これにて発表を終わります。(以上)



学生たちは1年間かけて、ゼロの状態から様々な調査、研究、試作品作りの過程を経て、最終的には3つのゲーム教材を考えれらました。3つのゲームについては成果発表会でご紹介されていましたが、実はまだまだ完成形には至っておらず、授業は終わるもののゲーム開発自体は今後も継続することとなりました。


学生たちは世の中になかった商品を生み出すことの楽しさを実感され、最後までやり切りたいという強い想いがあります。イッポラボとしては引き続き学生たちに伴走しながら、ゲーム開発を続けていきたいと思います。