なぜ「おもちゃ」ではなく、「学びの道具」と呼ぶのか

みなさん、初めまして。イッポラボの代表、田中です。この記事がブログの一番最初の記事になるということで、ぜひともお伝えしたいことについて書かせていただきました。

イッポラボは現在、子どもの成長に役立つ玩具を企画・販売していますが、一般的な呼び方であるおもちゃや玩具ではなく、「学びの道具」という言い方を独自に使うようにしました。今回はその理由についてお話したいと思います。少し長くなりますが、最後までお読みいただけると嬉しいです。


私は昔は教員になることが夢でした。小学生のころから友達に何かを教えることが好きだったのがその理由のように思っていますが、大学では教員養成課程に進み、教員免許を取得しました。今でも変わりませんが、一番の関心ごとは教育にあります。

大学一年生のとき、友達に誘ってもらいカンボジアをボランティアで訪れました。目的は、友達のお父さんが私費で小学校を寄付し、開校式典が行われるとのことでその式典に参加すること、またその小学校に通う子どもたちにノートや鉛筆を配るというものでした。これまでこの地域では木の棒にブルーシートをかけたものを学校としていましたが、晴れて煉瓦造りの立派な学校に変わったことで、子どもはもちろん、先生方や近隣住民の皆さんがとても喜ばれていたことを覚えています。この地域の家は道路沿いに点々としていましたが、その道を通って車で帰るときに、どの家庭からもご家族の皆さんが出てこられていて、こちら側に手を振ってくださいました。そのシーンも今でもはっきりと覚えています。18歳の学生の私にとってこのカンボジアでの体験はとても衝撃的で、「世界にはこういった教育環境で学ぶ子どもがいるんだ。世界の教育環境を良くする活動に関わりたい。」という新たな気持ちが生まれました。そして、国内の教育だけでなく、海外の教育にも関心が湧き始めました。

教員免許を取得したあとは大学院に進み国際協力という領域の学びを行い、国際機関でのインターンシップを経て、日本のODA(政府開発援助)を扱う組織でキャリアを積み始めました。ですので、私の専門を挙げるとすると、「教育」「国際協力」になります。


ODAの仕事を通じて、主に東南アジアやアフリカに学校を建設する事業に関わっていましたが、あるとき新しい事業に参加することができました。2013年に東京五輪開催が決定したのを機に、日本の外務省や文科省などがスポーツ・フォー・トゥモローと言うスポーツ国際貢献事業を始めました。その事業において、アフリカのマラウイと南米のグアテマラの小学校で運動会をすることとなったのですが、私はマラウイの運動会の実施メンバーとして現地に約5週間派遣してもらうことが出来ました。

いわゆる日本の運動会を日本から持って行きましたが、競技種目は先生たちと考えて決めて、当日の司会進行なども全て先生方に行ってもらうなど、現地にあった形の”UNDOKAI”を実施することができました。UNDOKAI自体はとても記憶に残る楽しいイベントになったのですが、私の心に残ったのは開催後に経験した出来事です。

UNDOKAIに参加してくれた子どもたちには1人一本参加賞としてボールペンを配りました。現地では鉛筆ではなくボールペンが普段から使用されています。そのボールペンをもらった子どもの様子はどうだったかというと、ボールペンはビニール袋に入っていたのですが、その袋から出さずにギュッと握っている子どもが何人もいました。子どもの様子を改めて見てみると、自分の勉強道具を持っていない子どもや、いつもは家庭の事情で学校にはこられないけどUNDOKAIだけは来た子どもなど、普段の生活においてきちんと必要な勉強が出来ていない子どもが大勢いることが分かりました。そのような子どもたちからすると、新品で黒と赤の2色が出て、自分だけのボールペンはとても貴重で嬉しかったのだと思います。

またそれと同時に、勉強道具がないという理由で子どもの学ぶ機会が失われてはならないと強く思いました。この小学校では学年が上がるにつれて児童数が減っていました。進学テストを通過出来ない、家族の判断で教育を受けさせないなど理由はいろいろとあり、また学年が上がるにつれて退学率も上がるというのはマラウイに限った話ではありませんが、「子どもが学校に通えている間にせめて母国語の読み書きや計算(=識字)は出来るようになるべきだ」と強く思いました。実はこの時の思いがイッポラボを起業してドゥミプログラムを始めた原体験となりますが、子どもが自分だけが使える勉強道具をきちんと持ち基礎的な学力を身に着ける環境作りが必要なのだと思います。

もしマラウイの子どもたちを初め同じような境遇の子どもが勉強道具を持てたらどうなるでしょうか。母国語をきちんと読み書き出来て、基本的な計算も出来るようになる機会を手に入れることが出来ると思います。そして、彼ら彼女らが手にするのは勉強道具というモノだけではなく、将来選べる仕事が増えたり、社会的弱者から抜け出すことが出来たり、誰かを助けたりすることが出来たり、つまりはより良い人生を歩めるようになる、そこまでのインパクトを持っていると思っています。イッポラボは勉強道具の無償提供を行っていますが、「学ぶ道具や機会を提供する」、こんな気持ちを乗せて活動しています。

マラウイの子どもたちと高台にて。生き生きとした表情が印象的です。

翻って、お客様にはどのような気持ちで玩具をご提供しているかについてお話します。

現在は子ども向けの玩具商品を企画販売しており、出産祝いやお誕生日のお祝い、また我が子の普段使い用という目的でお買い求めいただいておりますが、「それぞれの玩具を使うことで子どもの成長にどのように役立つのか」という点をきちんとお伝えすることを意識しています。これは、単にモノとしての商品をお届けしたいからではなく、子どもたちの成長に貢献したいという気持ちを込めているからです。つまり、「学ぶ道具や機会を提供したい」と考えています。

イッポラボは現在、demiやタテグなどのオリジナル商品販売と、他の方々が作られている商品を販売させていただく受託販売の二つの方法で商品をご提供しています。両方に共通することとしては、「この商品で子どもが遊ぶと、子どもの成長にどのように貢献出来るのか」を事前にしっかりと考えた上で企画、商品選択、販売を行っている点です。イッポラボのメンバーには私を含めて教育に関わるメンバーが多く所属していますが、販売を開始する前にはメンバー同士で意見を交わしてお客様へお伝えする内容を整理しています。


話が長くなってしまいましたが、なぜおもちゃという言い方ではなく「学びの道具」と呼ぶことにしたのか、その理由は、単にモノをご提供するだけに止まらず、その先にある成長や発達に関わりたいこと、さらには人生の選択肢を広げられるような機会をご提供したいためです。学ぶことで人は成長し、学ぶことで人生が豊かになります。そんな思いを込めて、学びの道具という言い方を使いたいと思います。

今後もイッポラボは日本国内外で学ぶ道具をご提供出来るように活動を続けて行きます。引き続きイッポラボのことをよろしくお願いいたします。